カテゴリ化を回避して人気アップ

カテゴリ化がアイドルの真価を見誤らせる

社会心理学では、ある集団を何らかの特徴で分けてグループ化する事をカテゴリ化という。

人はある集団に接する際、前もって対象に合致しそうなステレオタイプを用いて判断することは前ページで述べた。では、未知のアイドルに接した場合はどうするだろうか?まず何らかの関連性で一括りにしてカテゴリ化を試みる。

対象がユニットだったら自分の知っている似た構成のユニットを一まとめにして『~系』とか名付けたりするだろうし、ソロならば他のソロアイドルから類似点がある者を探してくっつけるだろう。こんな具合に。

  • 『アキバ系アイドル』:本拠が埼玉で週末だけ秋葉原でイベントを行うアイドルはどうなる?
  • 『地下アイドル』:何を以って地下というのか定義そのものからして曖昧で、意味が分からない。

アイドル界でよくあるカテゴリ化

大体、こういうカテゴリ化を行うのはマスコミである。見出しに向くとか広告効果とかでやるんだろうが、中身と違う情報を掴まされるアイドルファンの迷惑も考えてもらいたいものだ。

もう一つ、カテゴリ化の大好きなのが『まとめサイト』の住人だ。見出しがあると読者を引きつけ易いからだと思うんだが、センセーショナリズム全開で殆どリンクベイトだね。

こんな感じ>【悲報】今度は**ちゃんがアイドル食いの餌食に?!

ところで政治の世界ではマスコミによる世論誘導とか騒がれることがあるけど、アイドルでも有る。前振りだけで恐縮だが、話すと長くなるからアイドル業界に於ける(おける)マスメディアの影響については別の機会に述べたいと思う。知らず知らずの内に特定のアイドルに対する印象が好転するようになっているんだよ。

テクノ系アイドル・ロック系アイドル

実際はテクノじゃなくてEDMだったりロックじゃなくてメタルだったりするアイドルが混じる。

ご当地アイドル・ローカルアイドル

地方で結成した後にメジャーデビューしたアイドルまで一緒にしてたりする。

とまあ、実に乱暴なくくり方をされている。ファンなら誤った情報に惑わされないだろうが、新規さん(注:筆者はニワカと呼ばない)は情報の取捨選択が出来ないだろうから困ったものだ。

カテゴリ化⇔個人化

カテゴリ化とは似通った特徴を持つ集団をまとめることであるから、カテゴリ化を進めるほど個々の特徴は無視されてゆく。

これとは逆の考えが個人化で、個人の特徴に注目するほど集団としてのまとまりは薄れる傾向がある。この、個人に注目する事が偏見やステレオタイプを減らす効果的手法なのである。

アイドルファンも、固定化されたステレオタイプばかり頼っているとアイドルの真の姿が見えなくなる。『小中学生だけで構成された10人組アイドル』と聞いて、どんな想像をしただろうか?正解は・

さくら学院でした。無名って訳じゃないから分かってた人も居ただろうね。

【公式】さくら学院 – 『The Road to Graduation Final』トレーラー映像  (YouTube)

しかしリアル小中学生ユニットで、ここまでパフォーマンスの質を上げているのは驚きだ。さくら学院の特色はメンバーが粒揃いであることとパフォーマンスの質の高さだけれど、最たる特徴は実はそこではなくて個を前面に押し出している点にある。

ここまでに解説したように、アイドルユニットは全体で捉えられがちでステレオタイプ化されやすい傾向が強い。

このPVを観ただけでは『さくら学院』はハッキリ見えてもメンバー個人の姿は霞んで見えていると思う。名前も知らないし、顔も判別できないのが普通だ。このままだと年齢の若いアイドルユニットと一纏め(まとめ)にされてしまう恐れがある。それを避ける為に効果的なのが、さくら学院運営者のとっている公開授業などのイベントだ。

さくら学院のイベントにみる個人化の手法

さくら学院は学校エンターテイメントと称して学校形式の運営スタイルを採用している。講師を招いたイベントを『公開授業』と呼んで、生徒(メンバーを生徒と呼ぶ)の学ぶ姿を父兄(ファンをこう呼ぶ)に見せている。他にも『もしもしお悩み相談室』などの視聴者参加型番組も実施している。

公開授業などで生徒個々にスポットライトを当てる機会を設けることで、ファンからの生徒への視線を増やして個を印象付ける効果が得られる

これによりカテゴリ化を弱める非カテゴリ化が進み、さくら学院が個の集合体であると捉えられるようになる

文章で説明するより動画を見たほうが理解しやすい。さくら学院に対する自分自身の評価の変遷をご確認下さい。

【公式】第1回 さくら学院 もしもしお悩み放送室 第1部 ① (YouTube)

さくら学院ではこの他にも多くのアプローチで動画を配信しており、興味を持ったファンが生徒個人々の個性にアプローチ出来るようになっている。

更に、さくら学院では学院日誌と名付けた、生徒の手書きによるブログも公開している。 これは個人化に大いに効果的な手法だ。

【公式】さくら学院 学院日誌(ブログ)

『個人化』が熱心なファン作りのキーワード

アイドルファンの視点から考えると、容易にメンバーの個性を知ることが出来るメリットに気付く。外見だけでなく多くの情報を入手することで、自分の贔屓も見つけ易いだろう。

運営者側から考えても末永く応援してくれる熱心なファンを獲得できる大きな利点がある。情報過多は逆効果だが、さくら学院の場合は握手会などの接触イベントを全く行わないのでファンに飢餓感が残り、丁度良い露出具合になっている。

以上、情報提供を上手くコントロールしている例として紹介した。アイドルの将来は運営次第ということだ。

この項 おわり


おまけ:以前、筆者は『同窓会コンサート』なるライヴイベントに行った事がある。主に70年代にアイドルとして活躍した歌手が出演するコンサートであるが、そこに1980年デビューの『柏原 芳恵』が出演していた。
アイドルとして活躍してから30年以上経た今でも、彼女同様に年齢を重ねたファンが筆者の住む地方都市まで追っかけて来ていた。何名ものファンが会場となったホールの通路に並び、熱心に応援している姿に大変驚いた記憶がある。その時、柏原 芳恵は間違いなくアイドルだった。ステージ上で輝いていた。